writing by Osamu Hirayama *このコラムはiPM naviで配信しています プロジェクトの進捗は、計画と実績の乖離を分析して、現状を把握します。 PMであれば、『なぜ、進捗を把握しなくてはならないのか?』という理屈無しで実施するマネジメントタスクではないでしょうか? 現状を把握したら、次に何をするのでしょうか?将来の予測を分析しなくてはなりません。 しかし、将来を予測する正しいメソッドを持っていないPMが多いものです。 そのことから、リスクを見つけることができなく『品質』、『コスト』、『スケジュール』に大きな悪影響を与えてしまいます。 経験からの予測も大事ですが、現状の数値をもとに将来値を導き出し、リスクを見つけ適切な対策を講じる術をPMは身に付けておく必要があります。 特に、最近のプロジェクトは短期間納期・低予算と厳しい縛りがあるので…
監修:えのきのキャリア 2003年に大手コンサルファームにジョイン。 数年間のオープン系システムのインフラエンジニアを経験したのち、プロジェクトマネジメント関連業務へキャリアチェンジ。 以降中小から大規模までさまざまなプロジェクトにおいてPM/PMO業務に従事。 製造業、メディア、金融、官公庁など、業界を問わず経験しており、クライアントの様々な文化に柔軟に対応している。近年ではシステム関連の知識を生かし業務コンサルテイング領域でも活動中。

こんにちは、プロコンサルの平山 理です。
私が参加しているiPMでは、PM初心者のスキルアップやDX時代に適応したいPMのリスキリングのサポートとして、iPM TRAININGを運営しています。 このコースの一つとして、『プロジェクト計画書の作り方』を講座として提供しています。 計画書を作る中で、コストマネジメント計画・スケジュールマネジメント計画を考えていきます。 その際、プロジェクトのコスト・スケジュールの状態を分析するツールとして、 EVM(Earned Value Management)というメソッドを使っていきます。 受講されている人から話を聞くと、コストやスケジュルの分析は計画と実績の乖離だけを確認しているというマネジメントが圧倒的に多く、未来予測を行なっている方はいませんでした。 プロジェクトマネジメントは、現状の分析も大事ですが、事実から将来を予測して、リスクに備えることが肝心です。 そのため、将来の分析を行うメソッドとして実用性の高いのがEVMです 今回のコラムは大手コンサルファームでも使っている、プロジェクトのEVMを使って管理方法を解説します。

目次
EVMとは プロジェクト状況の計測 プロジェクトの状況を正しく把握する プロジェクトの状況を分析する プロジェクトの将来の状況を予測する 事例をもとにEVMを使ってみる(1) 事例をもとにEVMを使ってみる(2) まとめ
EVMとは

プロジェクトマネージャは、計画と実績からプロジェクト完了までの以下を予測しなくてはなりません。 ・工数の消費進捗から見た必要工数 ・スケジュール進捗から見た必要日数 それにはEVM(Earned Value Management)を使うと便利です。 EVMは、計画と実績から工数超過や作業遅延、今後の予測値を視覚的に把握できます。 多くのプロジェクトでは、コストマネジメント、スケジュールマネジメントの分析ツールとして使われます。
プロジェクト状況の計測
EVMを使うには、以下の順番で行なっていきます。 ・プロジェクトの状況を正しく把握する。 ・プロジェクトの状況を分析する。 ・プロジェクトの将来の状況を予測する。
プロジェクトの状況を正しく把握する

プロジェクトの状況を正しく把握するには、このようは計測値を使っていきます。 BAC: プロジェクト完了までに計画工数 PV: 計画時点で見積もった成果物の完成度を工数の価値に換算する(成果物を作るために必要とされる計画工数) 〔 計算式 〕 計画工数 × 計画進捗率 EV: 成果物の完成度を実工数の価値に換算する 〔 計算式 〕 計画工数 × 実績進捗率 AC: 現時点までに費やした実工数 PVとEVに計算式を示していますが、正確な数値が分かるのであれば、計算式を使う事はありません。 また、これらの計測値を視覚的に捉えられるように、EVMグラフを使っていくと便利です。

計測値を使うことでスケジュールや工数の状況が分かります。 このグラフから読み取れるのは、現時点では工数超過をしていて、本来予定していた成果物が完了しておらず、工数超過とスケジュール遅延というネガティブな状況であることが分かります。

プロジェクトの状況を分析する
プロジェクトの状況を分析するには、SPIとCPIの計測値を使います。 SPI: スケジュールの予定と実績の差からスケジュールのリスクを分析することができます。 SPIからは、このようなことが分析できます。 “ SPI < 1 ” の場合 遅延してプロジェクトが進行している。 “ SPI = 1 ” の場合 予定通りにプロジェクトが進行している。 “ SPI > 1 ” の場合 前倒しでプロジェクトが進行している。 CPI: 工数の予定と実績の差から、工数のリスクを分析することができます。 “ CPI < 1 ” の場合 工数超過でプロジェクトが進行している。 “ CPI = 1 ” の場合 予定通りの工数でプロジェクトが進行している。 “ CPI > 1 ” の場合 予定工数を下回ってプロジェクトが進行している。
また、SPIとCPAの数値の範囲から現状のプロジェクトにおけるスケジュールと工数を評価します。 この表は、パターンごとに進捗状況や影響範囲、対処方法の例を示しています。 これを参考にして、プロジェクトの状況を判断したり、リスクの洗い出し問題解決の糸口に使うことになります。

プロジェクトの将来の状況を予測する

プロジェクトの将来の状況を予測するには、ETC、EAC、TEACの計測値を使います。 ETC: 残作業に対する必要工数の予測を表す。 〔 計算式 〕 ( BAC - EV ) + CPI EAC: 完了時の工数予測を表す。 〔 計算式 〕 AC + ETC TEAC: プロジェクト終了期間の予測を表す。 〔 計算式 〕 BAC + SPI これらの計測値を組み合わせ使うことで、このような分析ができます。 前提条件: 現在のプロジェクトの状態が変化しない、と仮定した場合 ①プロジェクトが終了した時に、どのくらいの工数が超過するのか EAC - BAC ②プロジェクトが終了した時に、どのくらいの日数を超過するのか TEAC - 計画されたプロジェクト期間
事例をもとにEVMを使ってみる(1)

この事例をもとにEVMを使って分析したいきたいと思います。 このプロジェクトは、作業期間が10週間・作業工数18人月の計画で進められています。 現在、プロジェクトは製造工程の中盤で、5週目を終了しています。現時点では、工数を超過していて本来予定していた成果物が完了していません。 これは、工数超過とスケジュール遅延といったネガティブな状況であることが分かります。 また、SPI = 0.82 、CPI = 0.75 であり進捗状況が危険なプロジェクトであることが評価できます。

やはり気になるのが、プロジェクトの終了する時の ”超過日数” と ”超過工数” ではないでしょうか? ETC・EAC・ETACを使って予測値を算出すると、プロジェクトの終了段階で、6人月の工数超過となり、2.2週間の遅延という結果になります。 ⚫︎ プロジェクトの終了時の超過工数の計算 ① ETC の算出:残作業に対する総工数 ETC = ( BAC - EV ) ÷ CPI 12人月 = ( 18人月 - 9人月 ) ÷ 0.75 ② EAC の算出:プロジェクト終了までに発生する総実績の工数 EAC = AC + ETC 24人月 = 12人月 + 12人月 ③プロジェクト終了時の超過工数 EAC - BAC 6人月 = 24人月 - 18人月 ⚫︎ 超過する日数の計算 ① TEAC の算出:プロジェクト終了期間 TEAC = 計画されたプロジェクト期間 ÷ SPI 12.2週間 = 10週間 ÷ 0.8 ②超過する日数 TEAC - 計算されたプロジェクト期間 2.2週間 = 12.2週間 - 10週間 このプロジェクトは、納期に間に合わない赤字プロジェクトであると評価できます。
事例をもとにEVMを使ってみる(2)
プロジェクトにおいて、クリティカルパスのスケジュール遅延や工数超過は、重大な問題になることからクリティカルパスを切り出して、現状の分析と将来の予測をします。

これは、クリティカルパスに対して、作業工数をもとにしたEVMグラフです。 期間:8週間 作業工数:15人月 現在プロジェクトは製造工程の中盤であり、5目を終了しています。 現時点では、工数超過をしていて、本来予定していた成果物が完了していません。 クリティカルパスにおいて、工数超過とスケジュール遅延と言うネガティブな状況であることが分かります。 このプロジェクトのSPIは0.9、CPIが0.9であり、進捗状況が要注意なプロジェクトであることが評価できます。

ここで、クリティカルパスの終了時に超過する工数と日数を算出すると、このようになります。 超過工数 = 2人月 超過日数 = 0.5週間

PMとして大事なのは、この結果を受けてPMはリカバリーするということです。 EVMから分かった予測値は、プロジェクトの進捗実績から導き出された今後の論理値に過ぎません。
これは、『今後も間違ったマネジメント続けていけば、この結果になる』ということです。
そのため、PMは対策を考えて、実行することが必要となります。 WBSスケジュールを確認すると、『タスクB』と『クリティカルパスのタスク』が同時並行しているのが分かります。 これらは、後続タスクが無いない単独タスクなので、作業期間を伸ばすことができます。 そのことから、クリティカルパスのスケジュールのリカバリーのために、これらの対策が考えられるのではないでしょうか。 ・クリティカルパスの作業のさらなる分解 ・リソースの集中 ・一定期間の残業
まとめ
PMは、計画と実績からプロジェクト完了までの予測しなくてはなりません。 それは、『工数の消費進捗から見た必要工数』、『スケジュール進捗から見た必要日数』、これは必須です。 経験からの予測も必要ですが、科学的な観点から現状のプロジェクトから得られる数値情報をもとに導き出すマネジメントも重要なものです。 それには、EVM(Earned Value Management)を使って、計画と実績から工数長かや作業遅延、今後の予測値を視覚的に把握していきましょう。 ⚫︎ スケジュールの予定と実績の差からスケジュールのリスクを分析する SPI ⚫︎ 工数の予定と実績の差から、工数のリスクをを分析する CPI ⚫︎ 残作業に対する必要工数の予測を表す。 ETC = ( BAC - EV ) + CPI ⚫︎ 完了時の工数予測する EAC = AC + ETC ⚫︎ プロジェクト終了期間の予測する TEAC= BAC + SPI ⚫︎ プロジェクトが終了した時の超過工数 EAC - BAC ⚫︎ プロジェクトが終了した時の超過日数 TEAC - 計画されたプロジェクト期間 ⚫︎ 残作業に対する総工数 ETC = ( BAC - EV ) ÷ CPI ⚫︎ プロジェクト終了までに発生する総実績の工数 EAC = AC + ETC ⚫︎ プロジェクト終了時の超過工数 EAC - BAC ⚫︎ プロジェクト終了期間 TEAC = 計画されたプロジェクト期間 ÷ SPI TEAC - 計算されたプロジェクト期間 EVMには、このように多くのの指標があります。 これは現場でマネジメントを行う上で絶対に必要なものを取り上げました。 また、気を付けて欲しいのは、データを収集してEVMで分析することばかりに夢中になり満足してはいけません。 PMであれば、 ・今後も間違ったマネジメント続けていけば、この結果になる ・どのように建て直していこうか! このような意識を強く持たなければ分析結果の意味がありません。 分析して満足するのではなく、あくまでもプロジェクトの膿を出して事実と向き合い、正しい方向にプロジェクトを進めるようにEVMを使ってください。 最後まで読んでくれて有難うございました。
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