writing by MIRIO *このコラムはiPM naviで配信しています プロジェクト計画は予め作業工数を算出して万全に備えます。完璧にしたつもりでも、プロジェクトは予期せぬ出来事の連続です。 予期しない事象は回避しなければなりませんが、計画段階での予防はできないものです。 そのためには何をすれば良いのか? 作業工数に『リスク回避工数』を盛り込んでおきましょう。 リスク回避工数は、過去のプロジェクトで起こった問題事象とそれに関わった工数のデータを持っていれば推計できます。 意外にも、これをやっていないPMが多いってご存知でしょうか?
監修:Yuichiro Hayashiのキャリア 2000年に大手コンサルファームBにジョイン。
同社の創業時からパートナーとして、セールス・コンサルティングとあらゆる組織で活躍しビジネスの拡大に貢献。
2005年にコンサルファームを設立。
総数2,000以上のプロジェクトに携わり、経験したプロジェクトの検証と分析から『現場で使えるノウハウやリスク情報』を法人顧客やフリーランスPMOに提供。
2020年に大手クラウドソーシング 取締役としてジョイン。
大手コンサルファームBでのセールススキルを活かして同社スタートアップサービスの拡大に貢献
こんにちは、プロコンサルのMIRIOです。 私が参加しているiPMでは、PM初心者のスキルアップやDX時代に適応したいPMのリスキリングのサポートとして、iPM TRAININGを運営しています。 その中のオプションサービスとして、『トラブルプロジェクトの実例から学ぶ失敗しないマネジメント』をお伝えしています。 このコラムでは、読者のあなたへ、実際に私がPMアドバイザーとして参画し解決した、トラブルプロジェクトの実例を紹介します。 今回は、『リスクを考えたの?だからプロジェクトが止まったんだよ!』というテーマです。 あなたのマネジメント業務で活用できるように、解決までのアプローチを以下の順番でお伝えします。 ・プロジェクトの状況 ・問題の設定 ・原因追求 ・解決策 ・教訓(リスク管理表へ整理)
目次
・プロジェクトの状況 ・問題の設定 ・原因の追求 ・解決策 ・教訓(リスク管理表へ整理)
プロジェクトの状況
1.プロジェクトのスコープと体制
・顧客は大手人材紹介会社。
・顧客の情報システム部で新規構開発を実施。
・情報システム部の窓口は木村。
・プロジェクトオーナーは情報システム部の山田。
・システム化スコープは登録者管理、マッチング管理、顧客管理。
・中堅SierのA社が開発ベンダーとして参画。
・A社は全開発工程の成果物の納品、システムリリースの責任を請け負う。
・A社の開発体制は業務チーム、基盤チーム、テストチーム、管理チームで構成。
・A社のPMは佐藤(初心者PM)
2.プロジェクト目標
品質目標:100%の不具合修正
スケジュール目標:予定通りのリリース
コスト目標:予算内でのシステム完成
3.プロジェクトの進捗状況
現在、プロジェクトは製造・単体テスト工程であり、所要期間の50%が経過していた。
未確定の仕様が多く作業が滞った。
そこで、未確定部分をスコープ対象外にして欲しい旨を顧客の情報システム部 木村に依頼した。
しかし、木村から
「未確定部分をスコープから排除したらビジネスに悪影響が出る。」 「当初の予定通りにプロジェクトを進めてほしい。」 と一蹴された。 佐藤は状況を把握しているが、具体的な問題や解決策が分からない状態である。 **守秘義務により企業名・団体名・個人名等は架空名称となります。
問題の設定
*私がアドバイザーとして、プロジェクトに参画して解決させた経緯のスタートです。 問題を考える場合は、どのマネジメント領域で発生したかを分類することで、後続のアプローチがスムーズに行え、得られた結果の根拠も説得力を持つ。 そこで、今回の問題は、プロジェクトで起きた事象を、様々なプロジェクト情報から考えをもとに考たところ『コストマネジメント領域』で発生した問題として取り扱った。 また、今回のプロジェクトの問題をこのように設定した。 ”リスク回避の予測ができず作業が停滞する” そして、この問題を放置することで、品質目標である要望達成率100%を逸脱とスケジュール目標であるリリース日を逸脱する恐れがあった。
様々なプロジェクト情報とは
プロジェクト計画書、レービュー結果報告書、要求変更書、レビュー対象物、作業実績情報、作業範囲記述書、要件定義書、成果物一覧、課題問題整理表、役割分担表、要員の選定根拠、勤務表、成果物、関係者からのヒアリング結果
原因の追求
原因を特定するためには関係者へのヒアリングが重要である。 しかし、闇雲に関係者から聞き取りを行っても時間の無駄であることから原因の仮説を3つ立てた。 1.原因の仮説と検証 仮説1 未確定に仕様を忘れてた。
仮説の検証
未確定の仕様に関して課題管理表に記載されていたか? 【 検証結果 】 抜け漏れなく記載されていた。
仮説2 計画した開発工数が間違っていた。
仮説の検証
有識者が算出した開発工数も計画と同じだったか? 【 検証結果 】 有識者が算出した工数と同等だった。
仮説3 リスク回避工数の見積もりが間違っていた。
仮説の検証
有識者が算出したリスク回避工数も計画と同じだったか? 【 検証結果 】 有識者が算出したリスク回避工数よりも大幅に少なかった。
2.今回の問題の原因
リスク回避工数の見積もりが間違っていた。
と判明した。
また、PMは開発工数を算出したもののリスク回避工数を付加せず作業工数として扱っていたことが分かった。
解決策
原因から、過去の類似トラブルプロジェクトの事例やクライアントのビジネスニーズを考慮し、わたしは3つの解決策を準備した。 解決策A 未確定の仕様をスコープ対象がとしてプロジェクトを進める。 解決策B クリティカルパスに影響する未確定仕様を早急に決定し、プログラム製造を再開する。 解決策C 全ての要件を再確認してから、作業を再開しスケジュールを延期する。
そしてスケジュールを延期する。
現在のプロジェクトの状況とこの解決策の案をPO山田へ提言した。
PO山田は、このような意向があった。
⚫ スコープについて
作業の組み替えを行い未確定仕様を決定する作業は問題ない。
⚫︎ スケジュールについて
スケジュールの延期はできない。
このことから、解決策Bを採用した。
また、この解決策を施行することで、顧客とSIerに未確定の仕様を決める作業による工数が30%超過することになった。
教訓(リスク管理表へ整理)
今回の原因は、リスク回避工数の見積もりを間違っていたということであった。 このような事態を、事前に回避することはできる。 それは、プロジェクト計画の段階でこれらを実施することで防止できるのである。 ・作業工数の中にリスク回避工数を含める。 ・リスク回避工数を正確に算出して有識者のレビューを受ける。 今回のトラブルプロジェクトをリスク管理表に整理したので、あなたのマネジメント業務で活用して頂ければ幸いである。
最後まで、読んでいただき有難う御座いました。
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